立教大学のソーシャル・ワイナリー研究会「ジョージアの歴史からワイナリーとワインを読み解く」に行ってまいりました。
代表の竹内さんは、「ソーシャル・ソムリエール」として様々な活動をしてらっしゃるそう。
はにかみながら自己紹介されていたお姿がとても好印象でした。
私も、知人から「集客できる出張ソムリエ」と命名され、以来そう名乗っているという経緯があるので、勝手に親近感を抱いてしまいました!
そんな竹内さんは「前座」といいながらも、詳しい資料を多数使用しとてもわかりやすくジョージアワインの解説をしてくださいました。
「本編」は首都大学東京の前田弘毅先生(西アジア(イラン・グルジア)史、コーカサス地域研究)から、ジョージアワイナリーとワインの歴史的背景のお話。
前田先生の幅広い知識や経験、語学力に裏付けられた研究にも大変感銘を受けましたが、伺った中でとても印象的だったのは、ソ連のジョージアのワイン造りへの関与を全く否定するものではなく、国営社会としてのソ連の資金力による近代化や、効率社会への道筋をつくったという実績は完全に悪いものではなかったのではないかというお考え。
ソ連によってブドウの生態系が侵され(500種以上あった土着品種のうち絶滅に追いやられかけた品種も)、計画経済のもとワイン造りが収量優先のものになったことなど、これまで聞きかじっただけの知識でソ連をワイン産地にとっての「悪の帝国」のように私は捉えていましたが、ソ連の関与がなくなったことで実際困っている人々もいるのだそうです。
それでは、と前田先生に質問をしてみました。
2006年からロシアのワイン禁輸政策があり、当時は9割以上の輸出先がロシアの市場だったのでワインメーカーや農家は大打撃を受け、生き残りをかけて欧州市場にうってでたためにグルジア古来の品種の復活や品質の向上、ボトルデザインの洗練などに貢献したのであれば、ロシアからの禁輸という大事件は、ワインづくりの歴史から見れば必ずしも悪い出来事ではなかったのではないか?
すると前田先生は、いや、でもそれ以降ヨーロッパなどを意識してつくられたワインは、果たして美味しいワインなのか?彼らが本当に造りたいワインなのか?年間生産量6,000本というのは、とても経済的に恵まれた状況になる量ではないのではないか?ソ連の近代化によって生産技術が発達し品質が向上したものの、ロシアとの紛争(2008年)と経済制裁後の2013年頃ロシアの市場に何割かのワインが戻ったとき、古代クヴェヴリ製法で造ったワインというのは、それは彼らが飲みたいワインだったろうか?
計2年3ヶ月もの長い時間を現地で過ごされた先生ならではの、様々な見解を提示してくださいました。
研究会のあとの交流会では、竹内代表がジョージアのアンバーワインを提供してくださいました。
とても美しいアンバー(琥珀)色のワインでした。
交流会の会場は、立教大学近くのメキシカン。
ワイナリー研究会だけあって、黒板にメキシコワインが書いてあるのをめざとくみつけ、「メキシコにもワインあるんですね~」などと盛り上がりました。
お近くに座っていた方も有資格者だと分かり、お店のハウスワインのブラインドテイスティングをすることに。ハウスワインは赤は伊のカベルネソーヴィニヨン、白は同じく伊のトレッビアーノでした。
ワインについてもっと学びたい、そうあらためて思った楽しい研究会でした。
◎ジョージア・ワインとは何か?
「食で知る歴史・第一回:ワインで知るジョージア」
http://r-tsushin.com/meetup_report/georgiawine.html